統合失調症

統合失調症と前頭葉の関係性について【原因も交えて解説】

統合失調症と前頭葉の関係性について【原因も交えて解説】

精神的な病気と脳には深い関係性があり、統合失調症の発症にも脳が深く関わっていると考えられています。

とくに大脳の大半を占める前頭葉は、人間の感情や運動、言語などをつかさどる器官であるため、以前より統合失調症との関係性が示唆されていました。

そこで、本記事では統合失調症と前頭葉の関係について解説します。統合失調症の原因や治療法について疑問をお持ちの方は、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。

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前頭葉の働き

脳は、「大脳」「間脳」「中脳」「小脳」「延髄」という5つの領域に分けられます。なかでも大脳に含まれる「前頭葉」は、私たちの日常生活に必要な機能の営みや調整を担っている重要な領域です。

前頭葉は以下の6つの領域に分けられ、それぞれが異なった役割を果たしています。

  • 前頭連合野:感情や思考、判断、コミュニケーションなどをつかさどる
  • 運動前野:視覚的な情報をもとに行動する機能をつかさどる
  • 補足運動野:自発的に行動する機能をつかさどる
  • 一次運動野:運動野からの司令を伝える役割をもつ
  • 前頭眼野:眼球の動きをつかさどる
  • ブローカ野:会話や文字を書くといった言語に関する機能をつかさどる

このように、前頭葉は言動や思考、その他自制といった高度かつ複雑なことを行うために必要不可欠な器官なのです。

前頭葉の萎縮や血流低下によって前頭葉がうまく作用しなくなると、注意障害や感情の抑制が効かなくなる障害(情動失禁)などを引き起こすおそれがあります。

前頭葉が萎縮することによって引き起こされる精神疾患は、非常に多く存在しています。統合失調症も、実はそのひとつであるといわれているのです。

統合失調症と前頭葉の関係性について

先述したように、前頭葉が萎縮などによってうまく機能しなくなると、身体機能や情緒にさまざまな影響が出ます。

脳の神経細胞は加齢とともに減っていくため、年齢を重ねると脳は萎縮していくことが一般的です。しかし若い方であっても、ストレスによる脳内変化で前頭葉が萎縮することがわかっています。つまり、すべての年代の方にとって、前頭葉の萎縮リスクは他人事ではないということなのです。

統合失調症の原因は、まだ医学的に解明されていません。しかし統合失調症の患者様は、前頭葉や海馬などの領域に異常が生じることで、「考えや感情が上手にまとまらない状態」にあることが研究で明らかになっています。

明確な関係性についてはまだまだ研究が必要ですが、前頭葉の萎縮や異常が統合失調症の症状に関係していることは間違いありません。

統合失調症による神経伝達の障害について

統合失調症の患者様の脳では、神経伝達障害が生じていると考えられています。この神経伝達障害が原因となり、統合失調症の発症や症状が引き起こされるのです。

統合失調症の原因になっていると考えられている神経伝達の障害としては、2つの仮説が挙げられます。ここでは、各仮説について詳しく解説します。

ドーパミン仮説

ドーパミン仮説とは、「統合失調症の患者様の脳内で、神経伝達物質である『ドーパミン』の機能が盛んになっているのではないか」と考える仮説のことです。

ドーパミンは、意欲や幸福感をアップさせる作用があるホルモンです。これまでの研究により、ドーパミンの信号を受け取るための構造体(受容体)を阻害する働きがある抗精神薬が、統合失調症の治療に有効であることが明らかになっています。

ドーパミンの働きを妨げる薬が統合失調症に効果的であるということは、統合失調症の患者様はドーパミンの機能が活性化しているのではないかと推測されているのです。

麻薬や覚醒剤を長期的に使用すると、幻覚や妄想といった症状が現れますが、これらの薬物はドーパミンの機能を活発にする作用を持っていることで知られています。このことからも、ドーパミンの過剰な働きが統合失調症特有の症状を引き起こすという仮説は、あながち間違っていないことがわかります。

ただし、統合失調症の患者様すべてにドーパミン受容体の増加がみられるわけではありません。ドーパミン仮説については、これからさらに研究が必要になってくるでしょう。

グルタミン酸仮説

グルタミン酸とは、脳内で合成することができる非必須アミノ酸の一種です。リラックス成分として知られているGABAを生成し、脳の機能を活性化する効果があります。

神経伝達物質であるグルタミン酸の機能障害も、統合失調症の一因ではないかと考えられています。

研究により、特定の麻薬を乱用した人に、統合失調症と同じような症状が現れることが明らかになりました。この麻薬には、グルタミン酸受容体の一部の機能を妨げる効果があります。そこから、統合失調症の症状はグルタミン酸の機能が低下することによって生じるのではないかと考えられているのです。

前頭葉に異常が見られる場合のリハビリテーション

前頭葉に異常がある場合は、リハビリテーションを行うことで改善できる可能性があります。代表的なリハビリテーションの内容や治療法は、下記のとおりです。

理学療法

運動機能の維持や改善を目的に、運動や温熱、光線、水、電気などの物理的な手段を用いて行われる治療法です。体操を行ったり、マッサージや電気刺激を加えたりします。

作業療法

作業を通し、こころと体の回復を目指す治療法です。「どのようなことができるようになりたいか」「できないといけないのか」は一人ひとり違うため、作業の内容は異なります。たとえば、スポーツや創作活動、畑作業といった生活に関する作業を行うことが一般的です。

認知療法

ものの考え方や受け取り方に働きかけて、気持ちを楽にしたり感情・行動をコントロールしたりする治療法です。精神的な疾患を抱いている方のなかには、歪んだものの捉え方によってイライラしやすかったりネガティブになりやすかったりする方もいます。こういった思考を正し、日常を楽に過ごせるようにサポートします。

心理療法

人間関係や感情的反応、コミュニケーションを取るなかでの対処スキルの改善などを目指す治療法です。専門家との会話を通じて、不安な気持ちの解消や自己受容などを目指します。

上記のほか、損傷や脳腫瘍が原因で前頭葉に異常がみられる場合は手術、神経変性疾患などが原因の場合は薬物療法が用いられることもあります。

一人ひとりの発症の原因や症状によって必要なリハビリテーションや治療は異なるため、統合失調症の治療には医師の専門的な知識が欠かせません。

なお、統合失調症を治すために行うべき治療の全体像については、下記の記事で詳しく解説しているため、併せて参考にしてください。

統合失調症を治すためにやるべきこととは?治療法や注意点を解説

前頭葉異常の疑いがある場合は精神科を受診することを推奨します

統合失調症は、感情や思考をつかさどる前頭葉と深い関係性がある精神疾患です。加齢やストレスによって前頭葉が萎縮したり血流量が低下したりすると、統合失調症特有の症状が引き起こされることが明らかになっています。

前頭葉の異常によって統合失調症を発症した場合は、専門医による治療やリハビリテーション、投薬が必要となります。放っておくと症状が進行してしまう可能性があるため、統合失調症の疑いがある場合は、すぐにでも精神科を受診することが大切です。

銀座の精神科・心療内科の梅本ホームクリニックでは、専門医が統合失調症の治療を行っております。自宅で安心して治療を受けられる在宅医療を提供しているので、外出が難しい方も安心してご相談いただけます。

統合失調症や前頭葉の以上についてご不安を抱えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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