認知症

認知症による夜間徘徊|原因と対策を解説します

認知症による夜間徘徊|原因と対策を解説します

認知症による徘徊は、ご本人にとっては意味のある行動です。徘徊の裏には「環境が落ち着かない」「自分の居場所がないと感じる」「トイレに行こうと思ったが場所がわからない」などと必ず意味があります。しかし、周りの人から見ると徘徊の目的は理解しがたく、行方不明になったり怪我をしたりする危険があり、介護者にとっては大きな問題となります。

本記事では、徘徊の原因と正しい対処法を詳しく解説します。正しい知識を持つことでご家族やご本人、介護者の不安や負担の軽減に繋がるでしょう。

徘徊は認知症の症状の1つ

徘徊は、認知症の症状の中のひとつです。主に、認知機能の低下によって起こります。認知症による徘徊は、必ず理由があって起こるものです。歩く能力のある認知症の方では、その他の要因が重なると、必ずと言っていいほど徘徊をするようになり、病院や施設、家の中でも徘徊が起こります。たとえば、認知機能の低下による徘徊です。生理的な訴え(排泄や空腹など)が重なり、これらを解決するために歩き出したものの、場所がわからないことや、自分の置かれている状況が理解できないことで、徘徊に繋がります。

なぜ徘徊が起こるのか

では、なぜ認知症の方は徘徊してしまうのでしょうか。認知機能の低下だけでは徘徊には繋がりません。徘徊の背景には、環境的要因、心理的要因、身体的要因など様々な要因が隠れています。

ここでは、それぞれの要因の具体例を詳細にご説明します。

具体的要因

具体的要因としては、たとえば下記が挙げられます。

  • お腹が空いたから家に帰ろう
  • 会社に行くため外出する
  • トイレに行きたい
  • 探し物がある

認知症でなくても、私たちは様々な理由で外に出たり、その場を離れるために席を立ったりします。これは認知症の方も同様です。しかし、多くの認知症の方は、元々あった目的を忘れてしまうなどして、結果的に徘徊となります。徘徊の理由を聞いてみると、実は本人にとっては適切な理由が隠れています。また、徘徊の原因として、身体的な要因が隠れているのも事実です。喉の渇きを潤したり、空腹を満たしたりするなど身体的欲求を満たすことで、解消される可能性も考えられます。また便秘や下痢、頻尿など排泄に関する身体の不快感から徘徊に繋がることも多いため、排便のコントロールや定時でのトイレ誘導などの予防策を講じることが大切です。

環境的要因

認知症の方にとって、環境の変化は混乱に繋がります。見覚えのない場所や、馴染みのない方たちがいる場面だと、混乱してしまい、徘徊が起こります。また人への見当識障害がある場合は、周りにいる方たちがたとえ家族であっても「知らない人に囲まれている」と感じてしまいます。また落ち着かない環境や、居心地が悪い場所でも、本来の場所に戻ろうと徘徊するのです。

たとえば、部屋のカーテンを変えたり、模様替えをしたりするだけでも、見慣れた風景と異なるため徘徊に繋がることがあります。そのため、介護が必要になっても急に環境を変えないことが大切です。

心理的要因

認知症の方にとって、心理的ストレスも徘徊の原因です。たとえば、置かれている環境に対する不満や恐怖があると、居心地の悪さから外に出ようとします。特に夕方は、認知症の方にとって不安や孤独、焦燥感を感じやすい時間帯のため、徘徊が起こりやすくなります。以前の記憶や習慣から夕方になると、夕飯を作る、子どもを迎えにいく、会社から帰宅するなど「何かしなくては」という気持ちになり、外に出ようとする行動が多く見られます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、一般的な加齢性認知症やアルツハイマー型認知症とは異なり、50〜60歳代といった比較的若い年齢で発症します。アルツハイマー型認知症は記憶をつかさどる海馬から萎縮が始まります。対して、前頭側頭型認知症は、人格や社会性をつかさどる前頭部や言語記憶をつかさどる側頭部の萎縮がします。そのため、前頭側頭型認知症では人目を気にしなくなったり、感情的で衝動で行動したり、万引きなどの違法行為といった社会性を無視するような行動が見られます。また毎日のように急に外出するといった、気ままに見える行動が出現します。

徘徊する人にしてはいけないこと

頻繁に徘徊が起きると、介護者にとって非常に大きなストレスになります。しかし感情的に怒ったり、家の中に閉じ込めたりするとかえって認知症の方にとってストレスになり、徘徊などの行動を助長します。

ここでは、徘徊をする人に対して、してはいけない行動をご紹介します。

厳しく叱ってしまう

まずは、なぜ徘徊するのか理由を確認しましょう。たとえ理由が理解できなくても、否定したり叱ったりすると、介護者への恐怖感や不信感を与えてしまい、さらに徘徊が悪化する可能性もあります。理由を聞く際は、感情的にならないように注意し、話を傾聴するように心掛けましょう。ご本人は気持ちを話すことで落ち着くこともあるので、寄り添って安心感を与えられるように接しましょう。

たとえば、徘徊理由が自宅にいるにも関わらず「家に帰りたい」だとします。そこで介護者が、「ここが家だから」と答えるとさらにご本人の混乱を招くことがあります。このようなときは、話を傾聴した上で「今お迎えを頼んでいるから、その間ゆっくりお茶でも飲みましょう」など、興味をそらすような話題を振りましょう。また、なぜ家に帰りたいと思うのかを考え、ご本人の居心地が良い環境を整えることが大切です。

家から出れないように閉じ込めてしまう

理由のある徘徊を止めるのは、非常に困難です。鍵をかけて閉じ込めたり、靴を隠してしまったりすると、ご本人にとって大きなストレスとなり、暴言や暴力、不穏状態となり窓から無理やり外に出る原因となります。

徘徊が見られる際は家に閉じ込めるのではなく、介護者の見守りの下で楽しい気分で散歩させるといった対応をしましょう。

外出や活動によって体が疲れると、自然と休みたくなるものです。日中に十分な刺激と活動を提供することで、心地よい疲労感を感じ、昼夜のリズムも整うため、徘徊の予防になります。また、ご本人に簡単な作業や役割を与えることで、「何かしないと」といった不安感や焦燥感を軽減し、今いる場所が自分の居場所と認識しやすくなります。

徘徊する時の対処法

徘徊が起きてしまっても、できるだけ安全に帰宅できるような対策が必要です。安全な環境づくりと外出先での早期発見が大切です。

ここでは、徘徊をするときに介護者や家族ができる具体的な対処法をご紹介します。

転倒リスクを軽減させてケガを防ぐ

適切な予防を講じても、どうしても徘徊は起こってしまうものです。徘徊が行われた場合でも、なるべく安全に過ごせるような対策が必要です。たとえば、自宅内の段差などをできるだけなくし、手すりの設置によって転倒のリスクを減らせます。人の動きを感知すると点灯するライトを廊下に設置するのも良いでしょう。また、認知症の方が普段歩いている場所には物を置かないようにし、つまずくリスクを軽減させるよう工夫が必要です。

また、徘徊を知らせるセンサーを玄関に設置するなど、なるべく周りの方がご本人の外出に気がつけることが重要です。

服や持ち物に名前を付ける

外出先で迷子になってしまった場合に備えて、衣服やキーホルダーに名前を書いたり、カバンの中に連絡先を書いたメモを入れたりして、身元がわかるよう複数のメモを残しましょう。

位置情報がわかるよう、GPS端末を携帯させるのも有効です。首から下げるタイプや、ポケットや靴に入れられるタイプもあります。なお、ご本人の携帯電話もGPS端末として利用できます。また、近所の方や地域包括センターなどに、事前に徘徊する可能性があることを伝えておきましょう。ご本人の写真や身につけているものの特徴を記録しておくと、捜索するときの手がかりになります。

徘徊とは上手に付き合っていきましょう

徘徊は認知症の症状のひとつであり、認知機能の低下に加え、ストレス・身体的・心理的・環境的な要因などが重なって起こります。

徘徊を予防するには、考えられる徘徊の要因を解消することが大切です。上述の徘徊の要因を確認した上で、考えられる要因に対する適切な対処が重要となります。

徘徊を完全に予防することは困難ですが、家族や周りの方が認知症の方に寄り添い、予防や対策を講じることが大切です。また、梅本ホームクリニックでは、電話による無料相談を受け付けています。「認知症かもしれない」「認知症の進行を防ぎたい」という方は、お気軽に専門家に相談できる梅本ホームクリニックにご相談ください。

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