睡眠時無呼吸症候群の治し方・改善方法|治療後のケアまで

睡眠時無呼吸症候群の治し方・改善方法|治療後のケアまで

睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは、眠っている間に何度も呼吸が止まったり浅くなったりして、体が低酸素状態になってしまう病気です。睡眠中に症状が出るため、この病気を抱えている人は、家族から指摘されて睡眠中の呼吸の異変に気づくことが多い傾向にあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の危険性や治療方法について解説します。自宅で実践できる改善方法についても紹介していますので、ぜひできるものから実践してみてくださいね。

睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは

睡眠時無呼吸症候群とは、文字通り「睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする病気」のことを指します。眠っている間に平均して1時間に5回以上、かつそれぞれ10秒以上呼吸が止まる場合、この病気である可能性が高いです。

睡眠時無呼吸症候群になってしまうのは、空気の通り道である気道が部分的もしくは完全に閉塞してしまうことが原因です。とくに肥満体質の人や顎が小さい人、首が短くて太い人は、気道がふさがりやすい構造になっているため注意しましょう。また、睡眠中は咽頭の筋肉や舌が緩みやすいため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。

睡眠中に症状が出るので、自覚症状が生まれにくくて自分では気づきにくいとされていますが、決して珍しい病気ではありません。国立循環器病研究センターでは年間約500人に対して検査を行なっており、そのうち8割が「睡眠時無呼吸症候群の疑いあり」と診断されています。

睡眠時無呼吸症候群の危険性

睡眠時無呼吸症候群になってしまうと、一定時間完全に呼吸が止まってしまう「無呼吸」、もしくはもう少しで呼吸が止まりそうな弱い呼吸「低呼吸」になってしまいます。こうなってしまうと心臓や脳、血管に負担がかかってしまい、高血圧や脳卒中、狭心症、心筋梗塞などといった循環器病のリスクが上昇してしまいます。

ほかにも、いびきや夜間の頻尿、起床時の頭痛や日中の眠気などといった症状に注意が必要です。こういった症状は日中の作業効率の低下だけではなく、運転中や仕事中の事故につながって非常に危険です。

無呼吸になる回数が多いほど、病気や日常生活のリスクは高まります。手遅れになることがないよう、少しでも異変を感じたら早めに治療することをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の治し方

もしも睡眠時無呼吸症候群になってしまったら、どのように治療を進めていくのでしょうか。

睡眠時無呼吸症候群の治療には、おもに4つの方法が用いられています。ここでは、それぞれの概要を見ていきましょう。

CPAP療法

CPAP(シーパップ)療法とは、別名「持続陽圧呼吸療法」とも呼ばれる治療法です。これは、CPAP装置につないだホースとマスクを通して処方された空気を気道に送ることで、重力で落ちてくる舌や顎に常に圧力をかけ、気道を確保する治療法です。

睡眠時無呼吸症候群だけではなくいびきの改善も可能で、大幅な症状の改善が期待されます。検査を行なって一定の基準を満たせば保険適用となり、ほとんどの患者に対して有効性が高いです。そのため、睡眠時無呼吸症候群への療法の第一選択だとされています。

手術による治療

睡眠時無呼吸症候群の原因が明らかにアデノイドや扁桃の肥大によるものである場合、手術を行なうことが一般的です。また、ほかの治療法で効果がなかったときも、手術をしたほうがいいと判断されることがあります。

なお、睡眠時無呼吸症候群に用いられる手術の方法としては、以下の2つが挙げられます。

  • 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)

もっとも一般的な手術方法で、半数ほどの患者に有効だとされています。閉塞の原因となる口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して気道を広げる手術です。非常に治療効果は高いですが、傷が治癒するまでの間に激しい痛みを感じたり、鼻声や水を飲んだときに鼻へ逆流するようになったりする症状に悩むケースも少なくありません。

  • レーザー手術

レーザーで口蓋垂や軟口蓋の一部を切除する方法で、痛みが少ない治療法として取り入れられることが増えてきました。ただし、本来はいびきを和らげる治療法であるため、必ずしも睡眠時無呼吸症候群に有効だとは言えません。有効かどうかは、主治医にしっかりと検討してもらう必要があります。

口腔内装置治療

口腔内装置治療は、睡眠時に装置を装着して下顎や下を固定することで、気道スペースを広げて閉塞を防ぐ治療方法です。保険適用で安価かつ携帯に便利なため、利用する人が増えてきています。

治療に有効な口腔内装置としては、以下のようなものがあります。

  • 舌の保持装具
    舌が咽頭の奥に沈まないよう、固定する器具です。舌の痛みや不快感が強く出るため、使用されることは少ないです。
  • マウスピース
    上下の歯を固定して、下顎を前に引き出すことで気道が塞がることを防ぎます。軽度から中度までの患者に有効です。

薬剤等による治療

睡眠時無呼吸症候群は、じつは薬剤などによっても治療することが可能です。治療に用いられる薬剤の一例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 鼻腔を広げるためのテープ
  • マウステープ
  • 鼻の通りをよくするスプレー
  • 呼吸を刺激するホルモン剤などが入ったスプレー
  • 低酸素を改善するための酸素吸入療法用の酸素 など

症状の程度や原因によって最適な治療法は異なります。主治医とよく相談し、治療方法を決めていきましょう。

日常生活における改善方法

睡眠時無呼吸症候群は、自宅で実践できる方法によって症状の改善を目指すこともできます。

ここからは、日常生活における改善法を紹介します。「もしかして睡眠時無呼吸症候群かも?」と思ったら、以下の改善方法を試してみてください。

睡眠時の体位を工夫する

睡眠時無呼吸症候群は、寝るときの体位を変えるだけで改善するケースがあります。仰向けで寝ると重力で舌や顎が下がって気道がふさがりやすいため、横向きで寝るように気をつけるといいでしょう。

横向きで寝ることに慣れていない人は、枕を背中に立てて傾斜をつけたり、パジャマの背中に丸めたタオルを縫い付けたりする対策法がおすすめです。

禁煙

喫煙は気道の炎症を引き起こし、通気性に悪影響を及ぼしてしまいます。実際、アメリカの研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて睡眠時無呼吸症候群のリスクが高いことが判明しています。

もし睡眠時無呼吸症候群になってしまっても、禁煙することで症状の改善を目指すことは可能です。喫煙は睡眠の質を低下させることもわかっているので、睡眠に関する悩みがある場合は、喫煙習慣の見直しを行ないましょう。

アルコールを控える

アルコールをたくさん飲んだ日に、いつもより大きないびきをかいてしまった経験がある人は多いかもしれません。アルコールを飲むと気道の筋力が低下してしまい、閉塞しやすくなります。したがって、アルコールを飲むと睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まってしまうのです。

喫煙と同様、飲酒も睡眠の質を低下させてしまいます。寝酒をする人もいるかもしれませんが、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるときはアルコールを控えたほうが安心でしょう。

減量する

ダイエットは睡眠時無呼吸症候群の改善効果が高いことがわかっています。肥満になると首周りに脂肪が沈着してしまい、気道を圧迫してしまうためです。減量して脂肪を取り除けば首周りがすっきりして、気道の圧迫が改善されます。

ただし減量による症状の改善は、もともと肥満な人でないと効果が薄いとされています。痩せている人や標準体型の人である場合、脂肪ではなくほかに原因があることが考えられるため、適切な治療法を主治医に判断してもらいましょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療後のケア

睡眠時無呼吸症候群は治療によって改善することができますが、治療後に以前と同じ生活をしてしまうと再発の可能性が高まります。したがって、治療後も継続してケアすることを意識しましょう。

最後に、睡眠時無呼吸症候群の治療後に行なって欲しいセルフケアを以下にまとめました。

  • 横向きで寝る
  • 規則正しい生活と適度な運動を心がける
  • 適正体重を維持する
  • 過度な飲酒・寝酒を避ける
  • 禁煙する
  • 口呼吸から鼻呼吸へ変える
  • 睡眠薬の常習的な服用を避ける

せっかく治療をして睡眠時無呼吸症候群を治しても、再発してしまってはもったいないです。上記のポイントを踏まえ、健康的な生活で再発を防止しましょう。

まとめ:睡眠時無呼吸症候群の治療は生活習慣の改善から

睡眠中に呼吸が停止したり弱くなったりしてしまう「睡眠時無呼吸症候群」。放っておくと日中の生活の質が落ちるだけではなく、循環器病や大きな事故の原因となるリスクがあるため、気になる症状があるときは早めに医療機関へ相談することが大切です。

睡眠時無呼吸症候群の治療にはさまざまな方法がありますが、もっとも大切なのは生活習慣の改善です。日常生活でちょっとしたことに気をつけるだけでも、症状の改善は目指せます。ぜひ今日から、今回紹介した改善方法を実践してみてください。