睡眠時無呼吸症候群の5つの対策方法

睡眠時無呼吸症候群の5つの対策方法

「いびきがすごいと指摘されたことがある」「眠っても眠ってもまだ眠い」「疲れが取れない」…このような症状に当てはまる方は、「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。 ただ「眠れない」だけではなく、さまざまな合併症も報告されている「睡眠時無呼吸症候群」について、病態や症状、自分でできる対策方法などをお伝えします。

 

睡眠時無呼吸症候群の定義

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、その名の通り、睡眠中に一時的に「無呼吸」、つまり呼吸が止まってしまう病態をいいます。 発見された当初は、明確な原因が不明だったことから「~症候群」という名称がつけられました。現在はいくつかの原因が分かってきたため、別の呼び方に変わりつつあります(後述)。

 

(*この記事では、現時点でより一般的な「SAS」を使用します。)

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の医学的な定義は「7時間以上の睡眠中に、少なくとも 30回(1時間に5回以上)の無呼吸が、REM睡眠だけではなく、NREM睡眠中にも認められる」とされています。実際に診察する上では、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」だけでなく、換気量の50%以上の低下が10秒以上持続する「低呼吸」も含めて5回以上を「SAS」と診断します。

 

*REM睡眠:レム睡眠。身体は休息状態にあるが脳は活動している。

 NREM睡眠:ノンレム睡眠。脳(大脳)も休息状態にある。

 

睡眠時無呼吸症候群の症状

眠っているときに無呼吸や低呼吸になっているかどうかは、自分ではなかなかわかりません。 しかし、SASには睡眠時の無呼吸の他にもこういった症状があるので、これらに当てはまる方はSASの可能性があります。

 

①:日中

  • 強い眠気
  • だるさ、疲労感
  • 記憶力の低下
  • 集中力が続かない
  • 性欲の低下

 

②:夜間

  • 大きないびきをかく
  • いびき(呼吸)が止まった後、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる
  • 何度も目が覚めてしまう
  • 夜間の尿回数が多くなる
  • 夜間、汗をたくさんかく

 

この他にも、朝すっきり起きられない、熟睡感がない、起床時に喉が乾いている、頭や体が重いなどもSASの症状です。

 

睡眠時無呼吸症候群の種類と原因

最近では、SASの原因が明らかになってきたため「症候群(Symdrome)」の「S」が抜け、かつ主な原因によって2つのタイプに分けて呼ばれています。これが「閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)」と「中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)」です。

 

閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)

空気の通り道である気道が閉塞してしまうことで無呼吸状態となるのが「閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)」です。 SASの9割以上がこちらのタイプで、狭くなった気道を無理に空気が通過しようとするのでいびきをかきます。

 

中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)

呼吸中枢が何らかの異常をきたし、脳から呼吸の指令が出なくなるために呼吸が停止してしまうタイプを「中枢性睡眠時無呼吸症(Central Sleep Apnea:CSA)」と呼びます。SASの中でもこのタイプは全体の数%程度です。 気道が狭くなるわけではないので、いびきをかかないのが特徴です。

 

また、この2つのタイプの両方に当てはまる「混合性無呼吸症」という場合も稀にみられます。

 

睡眠時無呼吸症候群の合併症

SASは、先ほどの症状だけでなく、さまざまな合併症を引き起こします。

 

  1. 高血圧:睡眠中も無呼吸により身体にストレスがかかり、交感神経が興奮状態となり血圧が上がってしまう。
  2. 心筋梗塞:夜間の低酸素状態で心臓に負担がかかるため心筋梗塞となりやすい。
  3. 脳卒中(脳梗塞や脳出血など):高血圧や心筋梗塞が脳卒中の原因となるため発症リスクが上がる。
  4. 心血管系疾患:SASが重症化すると、心筋梗塞だけでなく狭心症や心不全などにもなりやすい。

 

SASの方は高血圧や心筋梗塞、脳卒中などのリスクが約3~4倍と言われています。さらに、重症例では心血管系疾患を発症する危険性が約5倍にもなります。 日中の眠気による交通事故の危険性も、SASでない人に比べて5~7倍になるとも言われています。

 

睡眠時無呼吸症候群の5つの対策方法

SASで医療機関を受診すると、専用の呼吸器やマウスピースなどで症状を緩和するといった治療が行われますが、自分で出来る対策方法もあります。

 

口呼吸を改善する

口呼吸は、鼻呼吸と比べて咽頭(喉の部分)が狭くなりやすく、気道が閉塞しやすい状態にあります。睡眠中の呼吸を変えるのはなかなか難しいですが、普段から口呼吸を意識することや鼻づまりの改善、市販の鼻腔拡張テープなどで鼻呼吸を促すことで、気道の閉塞が抑えられます。

 

睡眠時の姿勢改善を意識する

仰向けで眠ると、重力で舌が気道に落ち込みやすくなったり気道が狭くなりやすく、SASの方は注意が必要です。また、高すぎる枕なども、気道が折れ曲がり呼吸を妨げます。 抱き枕などを使って横を向いて寝る、枕の高さを低めにする、可動式のベッドであれば少し頭側を高くしてみるなどで、気道の閉塞を軽減することが出来ます。

 

適正体重を維持する

SASと肥満は非常に高い相関があります。肥満の方は、気道の周りについた脂肪が空気の通り道を圧迫してしまうので、高い確率でSAS症状を呈します。肥満の方は無理のない範囲で減量する、標準体型の方は今後も太らないように気を付けるなどのウェイトコントロールを意識してみて下さい。

 

アルコールと喫煙を控える

睡眠中は身体の筋肉が緩みますが、アルコールを摂取して眠りにつくと、特に身体の力が抜けます。舌や首の筋肉も弛緩して気道を保ちにくくなるので、アルコールは出来るだけ控えましょう。 また、喫煙者はSASの発症率が高いというデータがあります。また、喫煙そのものが血流の酸素濃度を下げやすくしてしまうので、身体の低酸素状態を更に悪化させます。喫煙の習慣を見直しましょう。

 

塩分を摂り過ぎない

最近の研究で、SASと塩分摂取量には相関があることがわかっています。塩分を摂りすぎると高血圧となり、高血圧がSASの症状をさらに悪化させます。 適度な塩分摂取は大事ですが、最近の食事は、普通だと思っていても塩分過多の場合がとても多いので、外食が多い方などは特に気をつけてみて下さい。

 

少しでも異変を感じたらすぐに病院へ

いびきや日中の眠気・集中力の低下などのSAS症状が思いあたる場合や、肥満や口呼吸の方、高血圧や心筋梗塞を指摘されたことのある方などは、SASの可能性があります。インターネットでのセルフチェックをしてみるのも良いですが、あくまで目安であり、睡眠時の呼吸状態がどのようになっているかは、睡眠時に検査しなければわかりません。

 

少しでも「あれ?」と思ったら医師に相談してみることをお勧めします。睡眠時の検査なので入院しなければならないと思っている方も多いと思いますが、検査機器をレンタルして自宅で出来る簡易検査もあります。

 

最近は「SAS外来」といって、SASを専門に検査や治療をしている医療機関も増えています。まずはお近くの医療機関の「SAS外来」を調べてみると良いかもしれません。

梅本ホームクリニックでは、睡眠時無呼吸症候群に関する相談を無料で承っております。日中の脱力感や夜間のいびきが気になる方はお電話でご相談ください。

 

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