統合失調症

統合失調症が発症するメカニズムについて【遺伝的要因も解説】

統合失調症が発症するメカニズムについて【遺伝的要因も解説】

統合失調症は幻覚や妄想、意欲の低下、認知機能障害など様々な症状を引き起こします。

病状が進行することでより激しい症状が現れることもあるため、統合失調症を発症する原因などについて知りたいという方も多いのでしょう。

本記事では統合失調症を発症するメカニズムや遺伝的要因について、陽性症状・陰性症状といった症状別のメカニズム、統合失調症の治療薬などを解説しています。

統合失調症の治療にあたり、まずは発症の要因に関して正しく理解しておきましょう。

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統合失調症が発症するメカニズム

実は統合失調症が発症するメカニズムや原因について、未だに詳しいことは分かっていません。

ただし現在は神経伝達物質の濃度異常によって、統合失調症の症状が引き起こされているのではないかと予測されています。

統合失調症を引き起こす要因とされている神経物質は主にドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリンの3種類です。それぞれの性質について簡単に確認しておきましょう。

【ドーパミン】

  • 快楽を司り、報酬系と呼ばれる神経伝達物質
  • 気持ちを興奮させる作用がある
  • 向上心やモチベーション、記憶や学習能力、運動機能に関与している
  • ノルアドレナリンの前駆体でもある

ドーパミンの分泌が不足すると物事への関心が薄れ、運動・学習・性機能が低下するとされています。

一方で過剰に分泌されていると、統合失調症や過食症、その他アルコール依存症やギャンブル依存症など、様々な依存症を引き起こす可能性が指摘されています。

【セロトニン】

  • 主に精神を安定させる役割がある
  • ドーパミンやノルアドレナリンの分泌量のバランスをとる作用も
  • 咀嚼や呼吸、歩行といった反復する運動機能に関与している

セロトニンが不足するとボーッとしやすい、鬱気味になる、パニックを起こしやすいといった症状が現れます。

逆に投薬などでセロトニンが過剰な状態になると、精神が不安定になったり発汗や発熱、振戦(異常な震え)など、セロトニン症候群と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。

【ノルアドレナリン】

  • 物事への意欲に源、生存本能に深く関係している
  • 交感神経を刺激して、心身を覚醒させる作用がある
  • ストレスに反応して怒りや不安、恐怖などの感情を呼び起こす
  • そのため怒りのホルモン、あるいはストレスホルモンなどと呼ばれることもある

ノルアドレナリンの分泌が不足すると気力や意欲の低下、物事への関心の低下など抑鬱状態になりやすいとされており、うつ病の原因の一種であるとも考えられています。

逆に、ノルアドレナリンの分泌が過剰になると怒りっぽく、イライラしたりキレやすくなり、躁状態を引き起こします。

また、血圧を上げる作用もあるため、高血圧症や糖尿病などの病気の原因にもなり得るでしょう。

統合失調症の症状別のメカニズム

ここまで統合失調症の要因とされている神経物質について解説しました。

では、これらがどのようなメカニズムで統合失調症の症状を引き起こすのか、陽性症状と陰性症状のケースに分けてご説明します。

陽性症状

統合失調症の陽性症状の代表的な例としては、幻聴や幻覚、妄想などが挙げられます。

近年、これらの症状は、ドーパミンの機能異常によって引き起こされているのではないかとされています。

ドーパミンの働きを遮断する抗精神病薬が、統合失調症の陽性症状に一定の効果を示すことや、ドーパミンの働きを活性化させる薬剤が、統合失調症に似た幻覚・妄想を引き起こすケースが見られたからです。

つまり、統合失調症の陽性症状が現れる原因として、脳内のドーパミンの過剰分泌が関与していると考えられているのです。

また、脳内のGABA神経の異常も、統合失調症の発症に関係しているのではないかとされています。

GABA神経とは、精神を落ち着かせる作用を持つ神経のことであり、ドーパミンと対となる働きを示すものです。

このGABA神経の異常が原因でドーパミンの機能異常が発生し、陽性症状が現れている可能性もあるのです。

陰性症状

統合失調症の陰性症状としては感情や表現力が乏しくなる感情鈍麻、活動意欲の低下などがあります。この陰性症状にはセロトニンが関与しているとされています。

セロトニンは、人間をリラックスさせる作用を持っている神経伝達物質です。

セロトニンの過剰分泌、もしくは受容体の機能が高まってしまうことで、陰性症状が現れるのではないかと考えられています。

統合失調症は遺伝する?

統合失調症のなりやすさは親から子へと遺伝するとされています。

親が統合失調症の患者であった場合、子供も発症する危険率はおよそ6倍になるというデータもあります。

実際に、一卵性双生児の一人が統合失調症を発症した場合、50%の確率でもう一方も発症することが確認されています。

そのため、統合失調症に関して、遺伝的要因があることは明らかです。

ただしこれらのデータは全て統計上で判断されているものです。

そのため医学的・生理学的な根拠はありません。統合失調症の遺伝的要因については、現在も研究が継続されています。

統合失調症の原因から改善するための治療薬

基本的に統合失調症の治療方法としては、薬物療法を行うことが多いです。

治療に使用する薬は抗精神薬となります。

抗精神薬には、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2種類があるので、それぞれどのように神経物質に作用するのか見てみましょう。

定型抗精神病薬

定型抗精神病薬は、主に脳内で過剰に分泌されているドーパミンに対して、抑制作用をあらわします。

脳内のドーパミンの働きを抑えることにより、幻覚・妄想・不安・緊張・興奮などの症状を改善するための薬です。

定型抗精神病薬はドーパミンの働きを抑制する作用があることから、統合失調症の陽性症状について改善が期待できます。

定型抗精神病薬は薬剤の成分の化学構造や作用などにより、フェノチアジン系・ブチロフェノン系・ベンズアミド系などに分かれます。

非定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬は、神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンなど、多種類の受容体に作用することで、幻覚・妄想・感情や意欲障害といった症状を改善するための薬です。

こちらは陽性症状に加えて、意欲の低下や感情鈍麻など陰性症状にも効果が期待できます。

なお、統合失調症で使用する薬については、下記の記事で解説しているため、ぜひこちらも併せてご覧ください。

統合失調症ではどのような薬を使用するのかを解説します

統合失調症の治療には、精神科の受診が必要不可欠です

本記事では、現代で考えられている統合失調症のメカニズムについてご紹介しました。

結論として、統合失調症のメカニズムは明らかにはなっておらず、脳内の神経伝達物質に異常が見られていることのみが明らかになっています。

ただし、メカニズムが分からないからといって、統合失調症が不治の病であるということではありません。統合失調症は適切な治療を行うことで、回復できる上に、完全に社会復帰することも可能です。

銀座の心療内科梅本ホームクリニックでは、統合失調症の診療を行なっています。

また在宅医療にも対応しているので、患者に負担を強いることなく速やかに治療を進めることが可能です。

精神科の受診を検討している方は、ぜひ一度お電話にてお気軽にご相談ください。

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