統合失調症

統合失調症における観察項目とは?症状や回復までの過程と併せて解説

統合失調症における観察項目とは?症状や回復までの過程と併せて解説

100人に1人が罹患するといわれている統合失調症は、こころや考えがまとまりにくくなり、日常生活に支障をきたす精神疾患です。

統合失調症を適切に治療するためには、「治療が効果的かどうか」「患者様に合った方法かどうか」を判断する「観察項目」を定めて慎重に看護ケアを進めなければいけません。

この記事では、統合失調症における観察項目や気をつけたいポイントについて解説します。

統合失調症の症状や診断基準、発病から回復までの経過も説明するので、患者様のサポートにお悩みの方は、ぜひご一読ください。

お問い合わせやご相談は無料で承っております。下記からお気軽にお電話ください。

梅本ホームクリニックの在宅医療についてはこちら

統合失調症における症状

統合失調症は、精神疾患のなかでも多くの症状が現れる病気として知られています。一口に統合失調症といっても、患者様の状態や発病の原因によって異なった症状が現れます。

まずは、統合失調症の患者様に現れる症状についてみてみましょう。

妄想や同時に伴う幻覚症状

統合失調症の代表的な症状が、妄想や幻覚といった症状です。

「妄想」の症状が出ると、実際に起きていないことを真実のように思いこんでしまいます。

現れる妄想の種類は多岐にわたりますが、一例として下記のような思い込みをしてしまうことがあります。

  • 被害妄想:自分は嫌われている、悪口を言われているという思い込み
  • 関係妄想:すべての出来事を自分と関連付けて考えてしまう思い込み
  • 注察妄想:盗撮や盗聴の被害に遭っているという思い込み
  • 誇大妄想:自分が他人より優れているという思い込み
  • 被毒妄想:食事に毒を盛られていると考えてしまう思い込み

また、統合失調症に罹患している患者様には、実際には存在しない感覚や知覚を体験してしまう「幻覚」が現れます。幻覚にもさまざまな種類がありますが、下記のようなものが代表的な例として挙げられます。

  • 幻聴:本当は聞こえていない声や音が聞こえるように感じる
  • 幻視:実際にはないものが見える
  • 幻嗅:実際にはないにおいを感じる
  • 知覚過敏:音やにおいに敏感になり、過度に不快感を覚える

上記のような、「ないはずのものをあると感じる症状」をまとめて「陽性症状」と呼びます。

陽性症状の影響で、「みんなから監視されている」「いつも体中を虫が這っている」といった不合理な訴えをする患者様は珍しくありません。

意識・感情的な症状

統合失調症になると、意識・感情的な症状も現れはじめます。この症状を「陰性症状」と呼び、「あるはずのものがなくなる症状」である点が特徴的です。

陰性症状では、たとえば下記のような症状が現れます。

  • 喜怒哀楽の表現が乏しくなる(感情の平板化)
  • 思考が鈍って会話をしにくくなる(思考の貧困)
  • 意欲がなくなりさまざまな行動が難しくなる(意欲の欠如)
  • コミュニケーションが難しくなり自分の世界に引きこもってしまう(社会的ひきこもり)

統合失調症の患者様のなかには、目立った陽性症状が現れず、陰性症状のみが現れる方もいらっしゃいます。

こういった症状はうつ病などのほかの精神疾患と区別がつきにくいため、専門家による念入りな診察・検査によって診断を下すことが肝心です。

生活に悪影響をもたらすその他の症状

統合失調症は、こころや考えがうまくまとまらなくなる精神的な病気です。その影響で、目的と言動が一致しない行動をとることが増えます。

  • 盗聴されていると思い込み、家中の家電を破壊する
  • 監視されていると思い込み、カーテンを閉めたまま引きこもる
  • 自分が汚いと思い込み、繰り返し体や手を洗い続ける

上記のような、普通の状態では理解しがたいような行動を取ることが増えるため、日常生活に多大な悪影響を与えることは決して珍しくありません。

また、症状の一つとして「認知機能の大幅な低下」も挙げられます。

集中力や注意力が下がってしまうことによって、会話が理解できなかったり論点がズレた受け答えをしたりしてしまうことが増えます。

さらに、集中力の低下によって、仕事の能率が低下したり簡単な業務でのミスを連発したりすることも増加するため注意が必要です。

日常生活が思い通りにいかないことが増えるストレスにより、より統合失調症の症状が進行するケースも多々あります。

統合失調症と認められる基準

実は、「このような症状が出たら統合失調症」と認められる基準は統一されていません。なぜなら、統合失調症にはさまざまな症状があり、人によって病状が大きく異なるためです。

患者様によっては激しい陽性症状が出る場合もあれば、陰性症状がメインで陽性症状がほとんど出ない場合もあります。したがって、統合失調症の診断には専門知識と慎重な診察が欠かせません。

ただし、多くの場合はDSM-IVを使用した方法で統合失調症であるかどうかを判断します。DSM-IVとは、米国精神医学会によって作成された、統合失調症の国際的な診断基準のことです。

DSM-IVでは、統合失調症の診断基準を以下のように定めています。

  1. 以下のうち2つの症状が、各1か月の期間(治療が成功した場合はより短い)、ほとんどいつも存在している
    ・妄想
    ・幻覚
    ・解体した会話
    ・ひどく解体した、または緊張病性の行動
    ・陰性症状
  2. 社会的または職業的機能の低下
  3. 病状が6か月以上持続している
  4. うつ病、躁病を合併していない
  5. 物質乱用、身体疾患によって生じたものではない
  6. 自閉性障害の既往がある場合は、幻覚や妄想が1か月以上(治療した場合には短くてもよい)続いた場合のみ、診断する

上記の診断基準に当てはまる場合でも、自己判断で診断を下すことは避けましょう。

統合失調症は早期治療が肝心なため、少しでも心当たりがある場合は、早めの受診をおすすめします。

統合失調症の発症から回復までの経過

統合失調症は、発症から回復までにいくつもの病期を経る点が特徴的です。それぞれの病期で現れる症状や注意したいポイントが異なるため、ここで整理しておきましょう。

前駆期

統合失調症の代表的な症状である陽性症状が現れる前には、不安や感覚過敏、集中困難などの前兆症状が現れます。こういった発症の前触れとなる病期を「前駆期」と呼びます。

前駆期には、不安障害やうつと同様の症状が現れることが多いため、誤った診断が下されてしまう可能性はゼロではありません。

また、単なる疲労や体調不良と勘違いされて放置されるケースも多く存在しています。

しかし、このタイミングで医療介入できれば、統合失調症の早期寛解を目指しやすくなります。異変を感じたら早めに医療機関を受診し、専門家の意見を聞くことが大切です。

前駆期では、患者様の体調を見ながら精神療法をはじめとするアプローチを行います。

急性期

前駆期に続いて現れるのが、急性期です。急性期では、幻覚や妄想などの陽性症状が特に目立つようになります。

また、患者様が不安や恐怖を強く感じる時期であるため、無理に医療機関へ連れて行って治療を行うことは避けたほうがいいケースもあります。

むりやり外に連れ出すことはせず、様子を見ながら寄り添ってあげることが大切です。急性期では、幻覚や妄想を一時的に緩和するための服薬を行って治療することが一般的です。

消耗期

消耗期は、急性期で蓄積された心身の疲労が発現する病期です。おもに陰性症状が現れ、思考や行動が鈍くなるほか、疲れやすさ、うつ症状が見られることもあります。

この時期は、少しの刺激が刺激になって急性期に逆戻りしやすいため注意が必要です。無理に活動させず、ゆっくりと休ませてあげましょう。

消耗期はこころと体の疲れが蓄積しているため、規則正しい生活を送りながらたっぷりの休息をとることが重要です。

睡眠をはじめとした、生活のリズムを取り戻すためのアプローチを行いましょう。

回復期〜安定期

回復期には、陽性症状が次第に減少していきますが、人によっては陰性症状が残ることがあります。消耗期と比べると症状が大幅に改善してくるため、活動量が少しずつ戻ってきます。

今後の生活や自分の体調についての不安や焦りが出やすい時期なので、可能な範囲で社会復帰を目指しはじめてもいいでしょう。

安定期に入る頃には、治療によって安定した生活を送れるようになっているため、以前と同じように通勤や通学ができるようになってきます。

ただし、無理をすると再び症状が悪化する恐れがあるため、本人の意見を尊重しながら、無理のないスピードで社会復帰を目指しましょう。

統合失調症の観察項目の中で重要なこと

観察項目とは、「治療が効果的かどうか」「患者様に合った方法かどうか」を判断するための項目のことです。

統合失調症の治療においては、どのような観察項目に着目すればいいのでしょうか。ここでは、2つのポイントを紹介します。

看護目標を明確にした上で観察を行うこと

統合失調症の治療を行うときは、患者様の気持ちや病状に寄り添い、刺激をして症状を悪化させないように気を配りながら看護ケアを行わなければいけません。

治療の際は、看護目標を明確に設定したうえで観察項目を作ることにより、適切な観察・治療を行いましょう。

観察項目を設定するときは以下の内容を基準に、患者様自身が問題解決できるようにサポートを進めていきます。

  • 自ら決められた服薬ができる
  • 自ら症状を管理してセルフケアを行える
  • 症状をコントロールし、暴力を避けられる
  • 自発的に無理のない活動や休息が行える
  • ストレスに対して適切に対処できる
  • 円滑な人間関係を構築できる
  • 妄想や幻覚に対処しながら生活を送れる
  • 自己と外界を区別できる
  • 社会復帰時に適切な社会生活を維持できる

看護する際は、自己解決能力が低下しないように過度な援助を避けつつ、それでいて患者様に適切なサポートを提供する必要があるため、慎重な目標の設定が必要です。

ご家族などのケアも同時に行うこと

統合失調症に悩んでいるのは、患者様本人だけではありません。ご家族など、周りの方も同じように悩みや辛さを抱えています。そのため、ご家族のケアも治療と同時に行う必要があるのです。

統合失調症の改善や再発防止には、ご家族や周囲の方のサポートが不可欠です。

しかし、急性期は周囲の方の負担が大きく、患者様への対応に疲れてストレスを抱えやすくなり、適切な接し方ができなくなるおそれがあります。

また、回復期や安定期は「病気が治った」と勘違いしやすく、服薬や環境整備といったサポートを行わなくなるケースもあります。

こういった周囲の方のストレスや勘違いは、統合失調症の悪化につながる可能性が高いです。

ご家族の方と接するときは、患者様とのコミュニケーションの取り方や向き合い方を適切に伝えてあげることが大切です。

統合失調症の方への具体的な接し方については、下記の記事で解説しているため、ぜひ併せて参考にしてください。

統合失調症の患者に対する適切な接し方を解説します

統合失調症では、観察項目を一つずつ確認しながら様子を見ましょう

統合失調症にはさまざまな症状があり、人によって顕著に現れる症状が異なります。統合失調症は、単なる体調不良と見過ごされたりほかの精神疾患と勘違いされたりしやすいため、自己判断せず、早めに医師の診察を受けることが肝心です。

統合失調症を治療するときは、病期ごとに看護目標を明確にしたりご家族のケアも行ったりと、留意しなければいけない観察項目が多く存在しています。

適切な観察項目で効果的な治療を行うためには、統合失調症に精通した精神科医の治療を受けることが重要です。

梅本ホームクリニックでは最適な観察項目を策定して、効果的に統合失調症の治療を行います。

症状が重く外出が難しい患者様向けに在宅医療も提供しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

お問い合わせやご相談は無料で承っております。下記からお気軽にお電話ください。

梅本ホームクリニックの在宅医療についてはこちら