認知症

認知症の妄想に効く薬とは?服用時の注意点も解説します

認知症の妄想に効く薬とは?服用時の注意点も解説します


認知症を発症することによって、記憶障害や見当識障害を引き起こすリスクが高くなります。

 

これらの障害から、様々な症状が引き起こされますが、その中でも介護者の頭を悩ませる症状の1つとして妄想が挙げられます。

 

認知症の患者が妄想をしてしまうことを理解していても、適切な対応が非常に難しいため、できる限り症状を抑えたいと感じている方は多いのではないでしょうか。

 

本記事では、認知症で起こる妄想の種類や、妄想に効果のある薬の種類、服用時の注意点について解説します。

 

認知症の妄想に対して、薬物療法を取ることを検討している方や、患者様の妄想にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

 

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認知症で起こる妄想の種類


認知症で起こる妄想は、下記の3つの種類に分けられ、種類によって有効な薬が異なります。

  • 帰宅妄想
  • 被害妄想
  • 物盗られ妄想

それぞれ順番に解説します。

帰宅妄想


帰宅妄想とは、認知症のBPSD(心理・行動症状)の一種であり、「帰りたい」という願望を抱くことです。

 

帰宅妄想は、見当識障害の一種であり、自分の居場所が分からなくなることによって発症します。

 

特に、慣れない場所や知らない人が多い場所などの、ストレスがかかりやすい環境下や、健常時の帰宅時間であった夕暮れ時の発症が多く見られます。

 

家の外にいるときはもちろんのこと、家の中にいるときにも発症することも珍しくありません。家の中にいるにもかかわらず、帰宅妄想が起きた場合は外に出ていってしまうことも多いため、危険性の高い認知症の症状の1つです。

 

患者様の身の危険はもちろんのこと、介護者の負担も非常に大きくなってしまうため、適切な対策を取る必要があるでしょう。

被害妄想


被害妄想とは、「周りに陰口を言われている」や「家族から暴力を受けている」といった、現実には無い被害を訴える妄想のことです。

 

被害妄想は、認知機能の低下よって発症しており、介護者などの周りの人間に対する不信感などが影響して現れます。被害妄想が起こると、患者様に責められることもあるため、介護者の大きなストレスとなってしまいます。

 

被害妄想は、助けを求めているメッセージとして捉えるべきであるものの、介護者などの精神的不安は非常に大きくなるため、薬などを用いて発症リスクを抑えることが大切です。

物盗られ妄想


物盗られ妄想とは、財布や通帳などの大切なものを、周りの人に盗られたと思い込んでしまう症状のことです。

先述した被害妄想の一種であり、認知機能の低下によって発症します。

 

認知機能の低下によって、財布や通帳といった大切な物をどこに置いたのかを忘れてしまい、見当たらないことから「盗まれた」という妄想を抱いてしまうのです。

 

認知症の患者様本人は本当に「盗まれた」と思っており、疑いの目を向けられることも珍しくありません。

 

対応によってはより大きな混乱を与える恐れがあるため、反応を見ながら慎重に対応することが大切です。

認知症で起こる妄想に効果がある薬


認知症によって、発症する妄想は、薬によって発症リスクを軽減できます。

認知症で起こる妄想に効果のある薬は、下記の4つです。

  • レミニール®(ガランタミン)
  • メマリー®(メマンチン)
  • イクセロン/4.リバスタッチパッチ®
  • アリセプト®(塩酸ドネペジル)

それぞれ順番に解説します。

レミニール®(ガランタミン)


認知症の妄想の原因の1つとして、「アセチルコリン」という脳の神経伝達物質の減少が挙げられます。
レミニール®(ガランタミン)は、アセチルコリンの減少を防ぐ「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」の1つです。

 

継続して服用することで、記憶障害や見当識障害の症状を抑えられ、軽度〜中程度のアルツハイマー型認知症の患者様に多く服用されています。

 

記憶障害や見当識障害の症状を抑えられることから、帰宅妄想や被害妄想の発現の抑制が期待できます。

 

継続的な服用によって、効果がある薬ではあるものの、嘔吐や吐き気といった副作用の発現もしばしば報告されているため、患者様の様子を見ながら服用してもらうことが大切です。

 

服用によって、これらの症状や、その他の体調不良が見られた場合は、すぐに医師に相談の上、適切な対処を行いましょう。

メマリー®(メマンチン)


認知症によって、神経障害や記憶障害が起きる原因の1つとして、脳内の神経に情報を伝えるNMDA受容体の過剰な活性化が挙げられます。

 

そして、このNMDA受容体の過剰な活性化の背景には、「グルタミン酸」という物質の過剰な働きがあるのです。メマリー®は、「メマンチン」という医薬品名であり、グルタミン酸の作用を抑える効果がある薬です。

 

鎮静作用のある薬なので、激しい被害妄想などを発症している患者様に用いられます。

 

BPSDに対して効果があるものの、服用によって活動量やものごとへの意欲が大きく低下する恐れや、めまいなどの副作用を起こすリスクもあります。

 

そのため、医師の指導に従って、適切に服用することが大切です。

イクセロン・リバスタッチパッチ®


イクセロンもリバスタッチパッチ®も、先述した、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の1つです。

 

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬である、レミニール®や後述するアリセプト®とは異なり、イクセロンとリバスタッチパッチ®は貼り薬です。そのため、飲み込みが苦手な患者様でも利用できます。

 

湿布薬であるため、他の湿布薬による皮膚のかぶれなどが過去に見られた場合は、必ず医師に報告しましょう。

 

皮膚のかぶれだけではなく、頭痛等の副作用も報告されているため、他の薬と同様に体調不良が見られた場合は、すぐに医師に相談することが大切です。

アリセプト®(塩酸ドネペジル)


アリセプト®は、アルツハイマー型認知症の初期から中期にかけて服用することで、進行を鈍化できる薬です。
レミニール®と同様に、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の一種です。

 

アルツハイマー型認知症の進行を遅らせられる上に、記憶障害の緩和の効果も期待できるため、物盗られ妄想の緩和にも効果が期待できます。

 

アリセプト®の副作用として、食欲不振や下痢、興奮などがあります。

 

脳内のドーパミン量が増えてしまう性質を持っているため、患者様が興奮状態になる可能性もあるため、服用時は介護者はそのことを留意した上で接する必要があるでしょう。

 

また、睡眠薬を服薬するべき認知症の周辺症状は下記の記事で解説していますので、お悩みの場合は本記事と併せてご覧ください。

睡眠薬を服用すべき認知症の周辺症状とは?発症リスクも併せて解説

認知症による妄想を改善する薬を服用する際の注意点


先述したように、それぞれの認知症の薬には副作用の可能性があり、服用する際は注意点を守る必要があります。

 

認知症の薬を服用する際の注意点は、下記の3点です。

  • 医師が指示する容量を守る
  • 少量の服用から始める
  • 状態変化を伝える

それぞれ順番に解説します。

医師が指示する用量を守る


認知症の薬を服用する際は、医師が指示する用量を必ず守りましょう。

 

認知症の薬はいずれも脳の神経に作用するため、飲み忘れや飲み過ぎによって、患者様の心身に大きな影響を与えてしまうリスクがあります。

 

しかし、認知症の患者様の中には、記憶障害や見当識障害を持っている方も多いため、介護者が服薬の管理をした上で、飲み過ぎや飲み忘れを防ぐための対策を取ることが大切です。

 

飲み忘れを防ぐための方法の1つに、1回分の薬を薬局でまとめて包装してもらう手段があります。特に服薬する薬の種類が多い場合は、検討すると良いでしょう。

 

さらに、薬の服用のタイミングで、アラームが鳴るように設定するなどして、服用そのものを忘れないような仕組みを作ることも効果的です。

 

また、飲み過ぎを防ぐ場合には、「偽薬」が効果的です。偽薬とは、見せかけの薬のことであり、飲んだとしても効果が無いものを指します。

 

記憶障害を持つ患者様の場合、薬を飲んだことを忘れてしまい、用量以上の薬の服薬をしようとすることがあります。

 

このような場合、介護者が説得しようとしても難しい場合が多いため、偽薬を飲ませることで、患者様を安心させながら用量を守れます。

 

実際に、介護施設などの、薬の飲み過ぎによる服薬トラブルは、偽薬によって多くが解決されています。患者様の記憶障害が強い場合や、飲み過ぎが不安な場合は、医師に相談の上、取り入れることを検討すると良いでしょう。

少量の服用から始める


認知症の薬は、いずれも副作用の可能性や過敏反応を起こしてしまう可能性があります。

 

さらに、患者様は自ら心身の異変を適切に伝えることが難しいことも多く、薬が原因で認知症が悪化したり、合併症を起こしたりする危険性もあるのです。

 

そのため、認知症の薬を服用する際は、必ず少量の服用から始め、患者様の様子を見ることが大切です。

 

その上で、効果が感じられない場合は、その旨を医師と相談の上、少しずつ量を増やすなどの対応をしましょう。

状態変化を伝える


認知症に対して、薬物療法を行う場合は、こまめに心身の状態変化をメモして、担当医師に伝えましょう。
薬物療法を適切に行うために大切なことは、患者・医師・薬剤師が現状を把握した上で連携を取り、最善策を見出すことです。

 

そのため、服薬中は副作用が起こっていないかに注意をして、異変を感じたら、すぐに相談することが大切です。

 

特に、薬の服用を始めたタイミングや、用量の増減が見られたときは、細心の注意を払い、異常がなかった場合でも必ず医師にその旨を共有するようにしましょう。

認知症による妄想は薬と在宅医療で適切に対処しましょう


本記事では、認知症の妄想を種類別に解説するとともに、効果的な薬や服用時の注意点について解説しました。
認知症の患者様が薬を服用する際は、介護者の適切なサポートと、医師・薬剤師との連携が必要不可欠です。

 

そのため、医師との信頼関係の構築が重要な要素となるでしょう。

 

銀座の心療内科梅本ホームクリニックでは、認知症の診察を行っております。自宅で診察や治療を受けられる在宅医療にも対応していますので、不調によって通院が難しい場合もお気軽にご相談ください。

 

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