AIにできない医療とは?医師の仕事がAIに奪われないために必要なことが分かる

AIにできない医療とは?医師の仕事がAIに奪われないために必要なことが分かる

技術の発展とともにAI(人工知能)が注目されはじめ、将来的にはさまざまな職業がAIに取って代わられるとウワサされるようになりました。しかし、AIはどのような業務でもこなせるわけではなく、人にしかできない業務も豊富に存在しています。

 

医療の分野でもAIの活用が期待されていますが、AIに仕事を奪われることを防ぐためには、これからの医師にどのようなスキルが求められるのでしょうか。この記事では、AIにできない医療について紹介します。

医療AIの医療現場の影響

AIの進歩により、これから私たちの生活は大きく変化すると言われています。しかし、具体的にどのような影響が出るのかイメージできている方はそう多くないでしょう。

AIは医師の仕事もこなすことができると言われており、実に8割もの仕事がロボットやAIの技術で代替できることが実証実験で明らかになっています。あくまで一例ですが、AIの進化によって将来の診察風景は下記のようになっているかもしれません。

 

  • センサー付きの診察台に乗るだけでバイタルをチェックできる
  • レントゲンなどの検査データをもとにAIが自動で診断を下す
  • ロボットが手術を行ってくれる
  • 薬局では検査結果に応じた薬が自動で処方される

もちろん、これは現時点で予想されている未来の医療の形で、必ずしも実現するものではありません。なかには現実味がないと感じ、SFの世界や夢物語だと考える方も多いでしょう。

しかし、実際にアメリカではAIが検査画像から自動でガンを発見したり、AIで新しい治療薬を開発したりした事例が存在しています。少し前までは考えられなかったことですが、短期間でこれほど技術が進歩したことを踏まえると、近い将来さらに医療AIが活用されていくことは間違いありません。

医師の仕事がAIに奪われる危険性について

それでは、技術が進歩すると医師の仕事はAIに奪われてしまうのでしょうか。

 

2015年に野村総合研究所が行った研究によると、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能になるということがわかっています。しかし、601種の職業ごとに代替確立を試算してみたところ、医師の仕事は「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」に含まれていました。つまり、医師の仕事がまるごとAIに置き換わることはないということです。

 

そもそも、AIは膨大なデータから「機械学習」や「ディープラーニング」によって法則性を見つけ、そのデータや法則性に基づいて判断を下します。学習したデータに基づいた判断は得意ですが、データがない場合に必要となる医師の実績に裏付けされた判断や、人間ならではの柔軟な対応をすることはできません。そのため、すべての医療行為をAIだけが行うことは不可能なのです。

 

AIが画像診断などの一部の業務を担うことはあるかもしれませんが、可能なのはあくまで「医師の補助をする業務」にとどまります。そのため「医師の仕事がAIに奪われる」と危機感を抱くのではなく、「医師とAIはより良い医療を提供するためのチームになれる」と考えたほうが、患者様の利益を向上につなげられるでしょう。

医療AIにはできないこと

それでは、医師にできて医療AIにはできないことにはどのような業務があるのでしょうか。この章では、医師にしかできないことについて具体的に3つ紹介します。

 

患者様との適切なコミュニケーション

AIには、患者様と適切なコミュニケーションを取るための機能は備わっていません。蓄積されたデータをもとに分析することは得意ですが、感情の機微を察したりそれに合わせた対応をしたりすることは、現時点ではできないとされています。

 

たとえば同じガンという病気でも、患者様の年齢や性格、家族構成などによって口調や伝え方を変える必要があります。医師は病気の診断だけではなく、適切なコミュニケーションを通して患者様やご家族の心のケアもしなくてはならないためです。

 

しかし、AIにはそういった臨機応変な対応ができません。患者様の感情をケアすることなく結果だけ伝えることになるため、どうしても機械的な対応になってしまうことは避けられないでしょう。

 

責任を負うこと

AIの判断は常に正しいというわけではないため、誤診や医療ミスを引き起こす危険性はゼロではありません。しかしAIがミスを犯してしまったとき、誰が責任を取るのでしょうか。

もちろん、医師も医療ミスを起こすことはあります。その場合は医師や病院が誠意を持って対処し、必要に応じてさらなる医療の提供や法的措置によって責任を取ることになるでしょう。

AIがミスを犯した場合は、通常AIの所有者が責任を取ることになります。しかし、所有者に故意が認められない場合やミスを予見できなかった場合は、所有者の過失とみなされず責任を負わせることが難しいとされているのです。

医療の現場では、どうしても医師による責任のある判断や対処が欠かせません。AIが医療行為のサポートをしても、最終的な判断は医師が行い、責任の所在を明確にしておくことが肝心です。

 

前例が少ない病気への対応

AIは、前例が少ない病気への対応はできません。なぜなら、AIは今まで蓄積したデータをもとに判断を下すためです。

たとえば、前例が多いガンの診断や治療方針の策定はAIでも可能でしょう。しかし、前例やデータが少ない病気についてAIが自ら判断を下し、対処法を考えることはできません。こういった臨機応変な対応は、医師の経験や実績に基づいた「勘」が必要になるのです。

 

AIだけに頼り切って医療を提供してしまうと、新型コロナウイルスのような未知の病気への対応が遅れてしまうリスクが高まります。

 

医療AIができること

医療AIにはできないこともありますが、反対にできることも豊富に存在しています。ここでは、医療AIがサポートできる医師の仕事について3つ紹介します。

画像診断

現在とくに進んでいる医療AIの技術は、医療画像診断です。AIは過去の症例やデータをもとに、人間が見落としがちな細かい情報まで一瞬で読み取って解析し、正確な診断の手助けをしてくれます。

レントゲンや心電図のような「スクリーニング検査」の分野では、今後高い確率でAI技術が活用されていくでしょう。

 

カルテ解析

カルテ解析も、AIが得意とする分野です。カルテ解析とは、カルテに患者様の情報や症状を入力することで、疑われる病名や対処法などを自動的に判断してくれる技術です。

カルテ解析も実際に医療現場で活用されている技術で、現在すでにさまざまなAI搭載電子カルテが提供されています。有効活用することで、正確な診断の手助けや過疎地域における医師不足への対応が可能となります。

 

施術のサポート

医療AIは、施術のサポートをすることも可能です。あくまで一例ですが、内視鏡の立体画像を確認しながら遠隔手術したり、手術の切離ラインを予測したりする技術の実用化に向けて、現在活発に開発が進められています。

 

ほかにも、AIの技術を応用できる施術は無数に存在しています。画像診断やカルテ解析ほど現場での活用は進んでいませんが、これからますます技術が進化していくことは間違いないでしょう。

 

まとめ

AIは多くの可能性を秘めている技術ですが、医師の仕事をすべてAI化することはできません。患者様の中には、医療の分野でAIを活用することに不安を感じている方もいることでしょう。そのような不安を取り除く心のケアも、医師の大切な仕事です。

患者様の心のケアや臨機応変な対応、責任を伴った判断は医師にしかできません。AI医療には限界があるため、今後は経験や実績が豊富な医師とAIの技術、両方を組み合わせてより良い医療を目指していくことが大切です。

また、梅本ホームクリニックでは、患者様それぞれの状況に合わせた柔軟な在宅医療を提供しております。無料の電話相談を受け付けておりますので「心のケアまで行ってほしい」、「最先端の医療を受けてほしい」と思った方は、お気軽にご相談ください。

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