5G時代の遠隔医療の課題と将来性を解説します

5G時代の遠隔医療の課題と将来性を解説します

遠隔医療とは

遠隔医療は、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」と定義づけられています。

代表的な例として、オンライン診療や遠隔健康医療相談などが挙げられます。

2018年の診療報酬改定にて「オンライン診療料」が新設されたのをきっかけに、全国的に普及し始めました。ただし、オンライン診療では触診や聴診などができないため、対面診療と比較して得られる患者情報に限界があるとされ、原則として再診のみ認められていました。

しかし2020年4月には、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として、初診でのオンライン診療が特例的に認められました。これは2022年1月現在も継続中です。

5Gは遠隔医療に大きな変化をもたらすのか

オンライン診療をはじめとする遠隔医療における課題は、オンラインでどれだけの情報を正確に伝えられるかという点です。ここで大きな役割を果たすのが、5Gの技術です。5Gとは「5th Generation」の略称であり、携帯電話などに用いられる次世代通信規格の5世代目という意味で、日本語では「第5世代移動通信システム」と表記されます。

5Gを活用すると、高精細映像の超高速伝送や、複数機器の同時接続、遠隔地からのロボット操作など、今までになかった新たな技術が実現可能です。5Gの活用によって、地方の医療格差などの現在の医療が抱えている問題が解決できるといわれています。

5Gでの遠隔医療における課題

そんな夢の技術である5Gですが、現時点では課題もまだあります。代表的な課題としては下記の3つです。

 

  • 医療制度
  • 医師のIoT機器の利用スキル
  • 機器やシステムのコスト

順に解説します。

医療制度

オンライン診療は対面診療と比較して診療報酬が低く定められているため、オンライン診療を行うことで医療機関に入る報酬が少なくなります。つまり、同じ患者様に同じ診察を行うとしても、オンライン診療と対面の診療では、前者の場合は医療機関の売上が低くなるのです。そのためオンライン診療を導入した医療機関の収益が少なくなります。その結果、お金をかけてシステムを導入しても、利益が下がってしまうといった事態になりかねません。オンライン診療をより普及させるためには、今後の診療報酬の見直しが必要とされています。

医師のIoT機器の利用スキル

5Gを使いこなすためには、使う側である医師にもある程度のスキルが必要です。特に、複数機器の同時接続が可能となる5Gは、従来のシステムに比べてセキュリティリスクが高くなるといわれています。病院では患者様の個人情報を取り扱うため、今まで以上に高精度のセキュリティ対策を講じなければなりません。

複雑な技術を導入するほど専門的な知識が必要です。多忙な医師がどこまで学ばなければならないのか、5Gを活用できる環境をどのように整えていくのか等が今後の課題となっています。

機器やシステムのコスト

5Gの恩恵を受けるためには、5G対応の通信機器やIoT関連機器を新しく買い直さなければならないため、多額のコストがかかります。比較的予算が組みやすい総合病院とは異なり、個人病院で一から専門機器を買い揃えるのは難しい場合もあるため、5Gでの遠隔医療が実施されてもその恩恵を受けられる病院に格差が出ることが懸念されています。

5Gが遠隔医療の現場にもたらすもの

5Gが遠隔医療の現場にもたらすものは多岐に渡り、今後も増えていくと考えられます。主に期待されているものは下記の5点です。

 

  • 高画質の画像・映像のやりとりによる遠隔医療
  • 救急搬送時の対応の迅速化
  • 複数機器同時接続による患者様の状況把握
  • 5G環境下での医師の遠隔教育
  • 遠隔医療による医療格差の解消

順に解説します。

 

高画質の画像・映像のやりとりによる遠隔医療

「医療過疎地域」という言葉が社会問題になるなど、地方の医師不足は深刻です。また、感染症対策などで外出がままならず、受診を先延ばしにしてしまう高齢者なども問題となっています。

そんな昨今の医療において注目されているのが5Gです。高速大容量通信が可能な5Gの技術を使えば、医師と患者がお互い離れたところにいても、リアルタイムで診察・診断ができるようになります。問診や視診はもちろんのこと、近所のクリニックや診療所で撮影した検査画像を、画質を落とさず総合病院の専門医に送信して、診断をしてもらうことも可能です。

 

救急搬送時の対応の迅速化

救急医療の世界では、いかに時間のロスを少なくして迅速に診断・処置できるかが非常に重要です。現在の救急医療では、患者を搬送する際、救急車両と病院の連絡手段として電話を使っており、音声のみで患者情報を伝達するのが一般的です。細かな準備や状態確認は、患者が病院に到着してから、状況を把握した上で行わなければなりません。

しかし、5Gに対応した機器を搭載した救急車両なら、搬送している間に患者の映像や検査データをリアルタイムに医療機関に送信することができます。医療機関はそれを確認し、過去の診察歴や病歴と照らし合わせることで患者の状態を把握することが可能です。

救急車両と医療機関が、事前に多くの情報を共有できるため、救急医は患者様の到着前に適切な準備が可能となり、到着後の処置をスムーズに行えます。

 

複数機器同時接続による患者様の状況把握

5Gで実現可能となった技術のひとつに、複数機器同時接続があります。この技術を使うことによって、複数の医療機器や設備を相互に接続して患者の状態を詳細に把握できるようになります。実際に、複数機器同時接続による診察・治療が行える「スマート治療室」の開発が脳神経外科領域で進められており、すでに実施されています。

 

また、地方の病院で若い医師が行った内視鏡検査の映像を5Gで都市部の病院に送り、それを確認しながら内視鏡専門医が指示を出すといった実証実験もすでに行われており、高く評価されています。

 

5G環境下での医師の遠隔教育

5Gの技術を導入した遠隔医療の恩恵を受けるのは、患者様だけではありません。今までは、専門医に患者を紹介した医師は、専門医がどのような意図で精密検査を行い、診断や治療を行ったかの詳細をリアルタイムでは分かりませんでした。今後、5Gにて遠隔地での患者診療が導入されると、紹介先での医師の判断がリアルタイムで把握できます。共有された情報を見ることで、離島や地方にいる経験の浅い医師も多くの経験が得られます。医師の教育という面でも、5Gは新たな機会を提供できると期待されているのです。

遠隔医療による医療格差の解消

上述のように、5Gによる遠隔医療の導入によって、離島や地方の医師も多くの経験を積めるようになります。これは医師や医療従事者のスキルアップにもつながるため、地域全体の医療サービス向上も期待できるのです。診療所やクリニックに居ながらにして、専門医の意見が聞ける遠隔診療は、都市と遠隔地における医療格差の解消にもつながります。これまでは、大病院や専門病院の近くに住む患者様のみ受け流ことができていた最新医療や専門治療を、地方や離島の患者様も受けられるようになります。

 

まとめ

本記事では、5Gを用いた遠隔医療における課題と恩恵を解説しました。

いくつかの課題はあるものの、5Gでの遠隔医療の実用化が進めば、遠方からの通院による身体的負担や、救急車両での患者搬送に伴う時間のロスを大幅に減らせます。また、地方に住んでいてもより専門性の高い医療が受けられるようになるでしょう。さらに遠隔地の医師や医療従事者も多くの経験を積むことで、地域全体の医療サービス向上も期待でき、都市と遠隔地における医療格差の解消にもつながります。

今も多くの実証実験が進められている5Gでの遠隔医療は、今後ますます多くの人が利用可能となり、高い水準の医療を受けられる患者様が増えるでしょう。

また、梅本ホームクリニックでは、最先端技術を用いた在宅医療を提供しております。無料の電話相談を受け付けておりますので「最先端の医療を受けたい」と思った方は、お気軽にご相談ください。

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